Mac を使っていれば、週に何度か同じ場面に出くわします。Slack で送られてきたエラーメッセージのスクリーンショット、LINE で共有された予約確認画面、Zoom 会議で共有された資料の一部、駅看板を撮った写真 — その中の「テキストだけ」が欲しい。けれど、Notion 上のテキストのようには選択できません。ピクセルはピクセルだからです。

幸いなことに、macOS 12 Monterey で Live Text が登場して以降、Mac でのスクリーンショット OCR はずいぶん簡単になりました。ただ少し残念なのは、組み込みの導線では 1 日に 20 回も使うとどうしても手数が多く感じる点と、多くの人が知らない Cmd+Shift+5 のフローティングプレビューを使えば 1〜2 ステップ短縮できるという点です。そしてそれを業務で日常的に使う人 — エンジニアがスタックトレースを取り出す、サポート担当が顧客スクリーンショットから情報を引っ張る、論文 PDF のスクショから引用文を抜く学生 — のためには、3 つ目の方法があり、これは全工程をほぼ「1 回のドラッグ」に圧縮します。

この記事では 3 つの方法をそれぞれ説明し、横並びで正直に比較し、どの場面でどれを使うべきかをお伝えします。

まずは Mac の 3 つのスクリーンショットショートカットの復習

テキスト抽出に入る前に、3 つの標準ショートカットは覚えてしまった方が後がラクです。どの方法でも前提として使います。

3 つとも標準では スクリーンショット YYYY-MM-DD HH.MM.SS.png という名前の PNG をデスクトップに保存します。保存先は Cmd+Shift+5 → オプション → 保存先 で変更できます。この設定はあとで何度か出てきます。どの方法が手に馴染むかが、この設定で実際に変わってくるからです。

もう 1 つ知っておくと役立つのは、最近の macOS(Mojave 以降)でスクリーンショットを撮ると、画面右下にサムネイルが数秒間ふわっと浮かぶ点です。このサムネイルは思っているより働き者で、方法 2 ではこれが主役になります。

方法 1:スクリーンショット → プレビュー → Live Text

最も発見しやすい導線です。Apple の公式ドキュメントが指し示しているのもこれで、多くの人が試行錯誤で辿り着くのもこの方法です。

  1. Cmd+Shift+4(フルスクリーンなら Cmd+Shift+3)を押す。
  2. 領域をドラッグ。スクリーンショットがデスクトップに保存される。
  3. ファイルをダブルクリック。標準ではプレビュー(Preview)で開く。
  4. プレビュー内で文字の上をドラッグ。文字の上にカーソルを持っていくと I ビームに変わり、普通の文書と同じように選択できる。
  5. Cmd+C でコピー。

独立した操作が約 5 ステップ。そしてデスクトップにはスクリーンショットファイルが残り続けます(あとで掃除するまで)。

プレビューの Live Text は本当によくできています。背後で動いているのは Apple Vision の同じパイプラインで、macOS 全体の OCR と同じ系譜です。英語は安定、日本語も縦書きを含めて十分実用、中国語・韓国語、フランス語・ドイツ語・スペイン語・イタリア語・ポルトガル語・ウクライナ語まで認識します。手書きもきれいなものなら拾えます。ダークモード UI のスクリーンショットでも問題なし。データ検出も効くので、電話番号や URL は右クリックで電話アプリやブラウザに渡せます。

不満点は実質 2 つ。手数(5 ステップ)と、デスクトップにファイルが溜まる問題です。週に 1 度くらいなら気にならないコストですが、毎日となると地味に効いてきます。

方法 1 がぴったりな場面

方法 2:Cmd+Shift+5 フローティングプレビュー + Live Text

これは過小評価されているショートカットです。スクリーンショット後に右下に出るフローティングサムネイルは多くの人が知っていますが、無視するか、Markup を開くためだけに使うかのどちらかです。macOS 13 Ventura 以降では、そのサムネイル上で直接 Live Text が使えて、プレビューを開かずに済むことを知っている人は意外と少ないのです。

導線は次の通りです。

  1. Cmd+Shift+5 を押す。
  2. キャプチャモードを選ぶ(領域キャプチャが多いはず)。
  3. 領域をドラッグ。
  4. 右下にサムネイルが浮かぶ。消える前にクリック(数秒の猶予あり、もう 1 回クリックで固定もできる)。
  5. Markup ウインドウが開く。文字の上でカーソルが I ビームに変わるのでドラッグして選択、Cmd+C。

同じく約 5 ステップですが、設定を整えておけばファイルは 1 つも作られません。Cmd+Shift+5 → オプション → 保存先:クリップボード にすると、画像はディスクに書かれずクリップボードへ直接行きます。こうするとフローティングプレビューは実質「一時的な注釈レイヤー」になります — テキストをコピーし終えてウインドウを閉じれば、何も残りません。

オプションでもう 1 つ便利なのがフローティングプレビューの表示時間です。デフォルトでは数秒で消えますが、明示的に長さを伸ばすスライダーはありません。代わりに 1 回クリックすれば固定できます。サムネイルを取り逃しがちな人は、右下に視線を予約しておく癖をつけると安定します。

方法 2 が勝つ場面

注意点

サムネイルは消える前にクリックする必要があります。そして Markup 内でも自分でドラッグして選択しなければ取り出せません — 「画像内のすべてのテキストをまとめて」というボタンはありません。1 枚に 10 行ばらばらに書かれた文字すべてが必要なら、10 行分のドラッグが要ります。文字の多いスクリーンショットでは少し疲れます。

方法 3:専用 OCR ホットキー(Cheese! OCR)

これは私たちが作っているプロダクトなので、その点は割り引いて読んでください。それでもワークフロー自体は事実として書けます。

  1. ⇧⌘E(または自分で設定したホットキー)を押す。
  2. テキストを含む領域をドラッグ。

これだけです。ファイルは作られません。ウインドウも開きません。認識済みのテキストはすでにクリップボード上にあり、どこにでも貼り付けられます。ドラッグ終了地点の近くに小さな確認チップが一瞬出て、結果はメニューバー内の検索可能な履歴にも保存されます。

これが方法 1・2 より速い理由は、OCR 本体ではありません。Cheese! OCR は Live Text と同じ Apple Vision フレームワークを使っているので、認識にかかる時間はほぼ同じです。速いのは「テキストが欲しい」と「テキストがクリップボードに入った」の間の工程が圧縮されているからです。ファイル保存なし、アプリ切り替えなし、Markup ウインドウなし、撮った画像内での再ドラッグなし。スクリーンショット領域を決めるドラッグが、そのまま OCR 領域を決めるドラッグになっています。

業務として日常的に使う場合、もう少し細かい点も効いてきます。

正直なトレードオフ

もう 1 つアプリを入れ、もう 1 つホットキーを設定し、$5.99 を払うことになります。スクリーンショット OCR の頻度が低い人 — 週 1 回・月 1 回 — なら、方法 1・2 で十分ですし、無料です。境目はだいたい「1 日に 1 回以上」のあたり。この頻度になると、節約される秒数と検索可能な履歴が、実際の時間として積み上がってきます。

横並び比較

方法 ステップ数 ファイル生成 多言語デフォルト 検索可能な履歴 料金
方法 1:プレビュー + Live Text 約 5 ステップ あり(デスクトップに PNG) あり(Apple Vision) なし 無料
方法 2:Cmd+Shift+5 フローティングプレビュー 約 5 ステップ 任意(保存先:クリップボード) あり(Apple Vision) なし 無料
方法 3:Cheese! OCR ホットキー 約 2 ステップ なし あり(英・中・日・韓) あり $5.99 買い切り

それぞれの方法はいつ使うべきか

友人に聞かれた時に答える、実用的な目安です。

方法 1(プレビュー + Live Text)が向く場合

方法 2(Cmd+Shift+5 フローティングプレビュー)が向く場合

方法 3(Cheese! OCR のような専用ツール)が向く場合

3 つの方法すべてに共通するパワーユーザー向けの小ワザ

「保存先」をクリップボードにする

意外に紹介されない、最もコスパの良い macOS スクリーンショット改造です。Cmd+Shift+5 → オプション → 保存先 → クリップボード。これ以降、すべてのスクリーンショットはクリップボードに入り、デスクトップにファイルが落ちなくなります。Slack、Notion、メール、どこにでも直接貼り付けられます。逆に「今回はファイルが欲しい」というときは Control を押しながら撮れば一時的に挙動を反転できます(現在の設定の逆方向)。

サムネイルを取り逃すなら、ピン留めする

右下に出てきたら 1 回クリックして固定します。連続でいくつか撮るときに特に便利です。

Cmd+Shift+4 → Space でウインドウをきれいに撮る

多くの人はウインドウの周囲をドラッグで囲んで撮りますが、これだと背景まで写ります。Cmd+Shift+4 → Space → 対象ウインドウをクリックすれば、角丸とドロップシャドウを保ったまま、背景なしで撮れます。シャドウが要らない場合は Option を押しながらクリック。

Cmd+Shift+5 ツールバーからも同じ操作ができる

「選択したウインドウを取り込む」がフローティングコントロールにあります。ショートカットを忘れたときの保険に。

Cheese! OCR 限定:履歴検索で過去の結果を呼び出す

同じ種類の領域(業務ダッシュボードの注文番号など)を繰り返し OCR するなら、検索可能な履歴がそのまま「過去の抽出結果のタイムライン」として機能します。メニューバーウインドウを開いて Cmd+F で絞り込めば、数日前の結果も数秒で取り出せます。

Cheese! OCR 限定:既存画像を渡す

メールや AirDrop で受け取ったスクリーンショットは撮り直す必要はありません。Cheese! OCR のメニューバーウインドウに画像をドロップするか、クリップボードからペーストすれば、同じ流れで認識できます。撮影自体が方法 3 でなくても、抽出のステップは方法 3 で済ませられます。

ホットキーは自分の指に合わせる

⇧⌘E が指に合わない場合(F キーが好き、衝突しにくい ⌃⌥⌘ 系の組み合わせが好き)、Cheese! OCR の設定で変更できます。同じことが macOS 標準にも言えます — 「システム設定 → キーボード → キーボードショートカット → スクリーンショット」で Cmd+Shift+3/4/5 をリマップできるので、他のツールと衝突したら遠慮なく差し替えてください。

3 つの方法のどれかが「正しい」というわけではなく、それぞれ違う頻度・違うワークフローに最適化されているだけです。週に 1 回、同僚と共有するためにスクリーンショットを撮り、たまにそこから 2 単語を抜き出したい、くらいなら標準機能で十分です。一方、テキスト抽出が仕事の一部になっている場合 — 講義スライドのスクショから引用を抜く、Slack スレッドからエラーメッセージを取り出す、ダッシュボードのスクリーンショットから 1 日に何度も数値をコピーする — なら、専用ホットキーは目に見えて差を生みます。まずは無料の方法から試してみて、「この数キーが惜しい」と思った瞬間が、Cheese! OCR のようなツールが元を取り始めるタイミングです。